9. パニック症における鍼灸治療
・不意に、個別に、苦痛・不安感・動悸・胸痛・窒息感・発汗・ほてり・悪寒・めまい・などの症状が生じるパニック発作(短時間)、将来の発作の不安感(予期不安)、広場恐怖を特徴とします。
最新の診断基準である DSM-5-TR では基本的特徴は、予期しない反復性(2回以上)のパニック発作を経験し、さらにパニック発作が起こるかと絶えず心配し悩まされ(予期不安)、またはパニック発作のために自己の行動が不適応的な方向に変化する(例:パニック発作を連想させる運動や場所の回避)のことで、1ヶ月以上持続する、他の症状では説明されないこと、とあります。
薬物療法としては、
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン,ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が弱い推奨、そして、BDZ ベンゾジアゼピン系(抗不安薬)などが選択されます。
①動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
②発汗
③身震いまたは震え
④息切れ感または息苦しさ
⑤窒息感
⑥胸痛または胸部の不快感
⑦嘔気または腹部の不快感
⑧めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
⑨寒気または熱感
これらの身体的症状は、自律神経過活動(交感神経亢進)時に生じるものが多く、鍼灸治療においては得意な領域です。
胸脇苦満(きょうきょうくまん):肋骨弓下部や側脇部の苦しく張った感覚、抵抗感 → 肝,胆(かん,たん)の病変
心下痞鞕(しんかひこう):心窩部、みぞおち部分の抵抗や圧痛 → 心(しん)の病変
このような東洋医学、漢方学における所見も多く見られます。
当院では背部や頚肩部への刺鍼と共に、疏肝や安神寧心などを治則とします。
百会、内関、太衝などを基本穴とし、その他灸治なども加える。
呼吸がしにくいなどの不安や窒息感・動悸へは胸をひろげゆるやかにする寛胸を目的とし胸部(壇中穴、玉堂穴、紫宮穴など)への浅い刺鍼、灸治を行います。
また、めまい症状が生じている場合は頚部、頬部、側頭部への刺鍼をも行います。
10. 更年期障害における鍼灸治療
・主な治療法としては
ホルモン補充療法、
エストロゲンパッチ、
漢方では加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸
などが選択される場合が多いのが現状です。
鍼灸治療では清熱という治療方針を元にして手や足に刺鍼を行います。
また、当院へお越し下さる更年期症状を訴えられる患者様のほとんどが首,肩の凝り感や詰まり感を併せて訴えられますので、その場合は首,肩への鍼灸治療を行います。
次に、入眠困難や寝てもスッキリしないというお話も多く伝えて下さります。
清熱という治療方針に、リラックスして落ち着いて頂くといった意である安神寧心という方針を加え、自律神経,そして脳の興奮を穏やかなものとします(頭部や手足への刺鍼)。