5. 手術侵襲における鍼灸 術後の鍼灸治療
術後疼痛に対する鎮痛効果 |
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術前鍼通電による手術侵襲における免疫抑制系路抑制の示唆 |
術後の腸管運動促進 |
については明治鍼灸大学 (現 : 明治国際医療大学) 外科学教室にて、また様々な鍼灸臨床や鍼灸研究論文と出会わせていただきました。
開腹手術後の癒着性腸閉塞(イレウス)においても鍼灸治療は一定の効果を示すと感じております。
腸閉塞(イレウス)とは様々な要因によって小腸や大腸に通過障害が生じる状態です(癒着性腸閉塞の多くは小腸に生じる)。
普段の食事も配慮され、痛みも伴う難解な症状でありますが、多くの鬱滞や、イライラ感への治療穴である太衝穴(足背部)への刺鍼や、腹部や頭部への刺鍼を思慮深く組み合わせることで、症状の和らぎを感じるとのお声を頂きます。
過去の臨床や研究論文より日々模索し、その方に沿う鍼灸治療の研鑽に励む次第です。
・ 鍼通電刺激は、手術侵襲による ACTH,ノルアドレナリン,アドレナリンの上昇を抑制し、NK細胞活性抑制,リンパ球芽球化反応の抑制を防止、または回復を促進させることが示唆されています。
また、末梢神経損傷部への刺激は神経再生促進効果が期待できます。
鍼灸とは運動器疾患や疼痛疾患のみならず、自律神経系や内分泌系を介して、消化器疾患、その他疾患、または免疫能回復の一助を担う物理療法であります。
6. 背部 腰臀部における鍼灸治療
はじめに、背部、腰部の痛み、急性腰痛発作(ぎっくり腰)や慢性的な腰痛、また、臀部より下肢への痺れ・違和感などが生じるものについて。
・ まず、背部(上腰部)の痛みです。患者様の指し示す部に硬結が存在する場合が多いのですが、更に上方、肩甲間部にトリガーポイントが存在することも少なくありません。下記、腰部 臀部でも述べさせて頂きますが、殊更、症状に対し広く注視する気立てが重要であると感じます。
・ 腰部に関しては、急性腰痛発作(ぎっくり腰)、慢性腰痛をはじめ、数々の症例と関わる機会に恵まれました。
特に得気、響き感を重要視する部位であるとも考えます。
(1)腰部から臀部にかけて伏臥位での低周波置鍼療法(鍼通電)を行った後、(2)側臥位での雀啄術、屋漏術を行います。側臥位である方が、より繊細な刺鍼が出来ると考えます(用いる鍼は細いものに限る)。
(1) と (2) は両輪であると考えますが(2)の刺術の重要度は高い。
また、急性腰痛発作では大層な得気、響き感が生じるが、柔らかな手捌きで安心感を与えるのが望ましいと感じます。
・ 腰部の痛み、下肢への痺れ症状は臀部が原因であることも少なくありません。臀皮神経障害は腰痛を、また、臀筋、梨状筋がトリガーとなり、腰痛や坐骨神経痛様の症状を生じさせることがあります。
その場合も、低周波置鍼療法(鍼通電)を行った後、上記の刺術を行うのが最も良いと感じます。
また、腰から腹部へ帯状に生じる痛みの場合は腰方形筋へ細やかな鍼を用いて刺鍼を行います。
(3)最後に、体動しながらの運動鍼を施す場合があります。
急性腰痛発作(ぎっくり腰)では1-2回で快方へ向かう例がほとんどです。
細い鍼を用いた丁寧な鍼術は、痛みの緩和に優れていると感じます。
腰部脊柱管狭窄による神経根の圧迫
神経根の圧迫・阻血によるしびれや痛みにつきましても、鍼通電による鎮痛効果と血流促進効果による症状改善を目的とします。